あらすじ
冒険者アリスは、いつも壊れた懐中時計を持ち歩いている。
鎖付きの古びた時計。
針は動かず、時間を知ることもできない。
それでも彼女は、毎日欠かさずそれを身につけていた。
なぜ直さないのか。
なぜ大切にしているのか。
疑問に思ったライルとセレナは、彼女の懐中時計に隠された理由を探り始める。
大切な人から贈られた形見なのか。
失った過去に繋がる品なのか。
それとも、外せない呪いの時計なのか。
二人はそれらしい理由を次々と考える。
しかし、アリス本人に尋ねた時、返ってきた答えは――
「壊れてたから、直したのよ」
あまりにも普通の答えだった。
特別な意味などない。
ただ、気に入っていたから。
人は時に、他人の大切なものに勝手な物語を作ってしまう。
これは、一本の懐中時計を巡る、少しずれた推理と三人の日常の物語。