あらすじ
四季はめぐり、光と影はたえず人の暮らしを照らし、また覆いもする。
この句集に収められた言葉たちは、その移ろいの中でひそやかに息づく草木の声、祈りの場に立つ人の気配、そして日々の営みの奥に潜むよろこびと哀しみを、まっすぐに受け止めて紡がれたものである。
新年の福寿草に始まり、東風、草餅、麦笛、蝸牛、紫蘇の香、蝉の声、朝顔、曼殊沙華、小春日、虎落笛、冬木立へと至るまで、季節は静かに、しかし確かにその姿を変えてゆく。
その折々に立ち現れる情景は、どれも等しく尊く、儚く、そして温かい。自然の息づかいと人の心の揺らぎが、まるで一幅の絵巻のように連なっている。
この作品群には、ただ季節を愛でるだけではない、現代を生きる者の切実な声も刻まれている。知らされぬまま隣地に建てられた建物により、空と光を奪われた一人の消費者が、「何が正しいのか」を問い続けただまし売り裁判の記憶。その無念と、やがて勝利へと至る歩みは、一句一句に凝縮され、静かながらも強い響きを放っている。
この句集は、自然と人間、日常と祈り、喜びと痛みが交差する場所に立ち、そこに確かに存在する「生きることの手触り」をすくい上げた記録である。読む者は、季節の光景に心を寄せながら、同時に一人の人間が真実を求めて歩んだ軌跡にも触れることになるだろう。
どうか、頁を繰るごとに、あなた自身の記憶や感情が呼び覚まされ、静かな余韻が胸に広がることを願っている。