あらすじ

ダンジョン遺失物回収員――通称「回収屋」の瀬名透真は、なぜかダンジョン記録網だけに存在を認識されない。ゲートを通っても入場人数は増えない。救難信号を送っても、発信者は「該当なし」。誰かを助けても、救助者の欄に名前は残らない。 そんな透真の端末にだけ、死亡者名義の未送信ログが届く。ただし、それは死者が教えてくれる真実ではない。主語の欠けた短文。恐怖による誤認。書きかけの報告。物証と食い違う告白。保証されているのは、誰かがその情報を残そうとしたことだけだった。 ある日、人気探索隊《蒼牙の剣》が崩落事故に遭い、四名が死亡。行方不明となった荷物持ち・久我悠斗は、事故直前に荷物を置き、仲間とは逆方向へ走った記録から、「仲間を見捨てて逃げた」と非難されていた。 だが、死亡した斥候・黒沢敦の未送信ログには、二つの短文が残されていた。 《まだ、握ってる》 《押した》 久我が隊列を離れたことは事実だ。荷物を置いたことも、逆方向へ走ったことも記録されている。だが、どこにも「逃げた」とは書かれていない。 透真は保守空洞の奥で、切れた命綱を握ったまま生きている久我を発見する。 救助記録監査官・水城澪は、透真にも死者ログにも容赦なく疑いを向けた。 「死者の言葉ではなく、まだ残っている物を見ます」 生きたまま死亡認定された探索者。死者の端末に、生き残った者の責任を引き取るような言葉が残った事故。四人いるのに、記録上は零人となった救助隊。 記録に残らない回収屋と、記録を疑いながらも捨てない監査官が、記録、証言、死者ログ、現場の痕跡を読み直し、救助対象からこぼれ落ちた人々を一人ずつ拾い上げる。 現代ダンジョン救助ミステリー。

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カクヨム
カクヨム2026/07/21
  • 現在の作品ダンジョン記録に俺だけ載らない。だけど死者の未送信ログだけは届く