あらすじ
俺が書いた小説の世界が、現実になった。
正確には、俺が設定だけ考えて、本文はほとんど生成AIに書かせた現代ファンタジー小説である。
通勤途中の駅に現れたのは、異形の怪物《喰影獣グラトニア》。
間違いない。
こんな恥ずかしい名前を付ける人間は、世界に俺しかいない。
幸い、この先の展開は知っている。
この駅で原作主人公が覚醒し、怪物を華麗に倒すのだ。
問題は、原作主人公の顔も、覚醒条件も、怪物の弱点も覚えていないことだった。
なぜなら俺は、完成した小説をほとんど読んでいない。
「次に何が起きる?」
「……大変なことだ」
「場所は?」
「都市部」
「時間は?」
「たぶん夜」
曖昧な記憶と苦し紛れの発言は、なぜか次々と的中。
その結果、俺は未来を見通す謎の重要人物として、原作主人公、疑り深いヒロイン、俺より設定に詳しい研究者から頼られることになってしまう。
違う。
深い考えなんてない。
俺も今、初めて知った。
安全な場所へ逃げたいだけなのに、評価が上がるほど危険な事件の中心へ。
能力の使い方は知らない。
重要人物が敵か味方かも分からない。
最終ボスの倒し方に至っては、そのあたりまで読んだ記憶すらない。
いや、原作者の俺がなんで初見なんだよ!
これは、自作世界について誰よりも知らない原作者が、知ったかぶりと偶然で過大評価されながら、今さら自分の物語を攻略していく現代ファンタジーコメディ。