あらすじ
~登場人物とあらすじ~
【登場人物】
◆ファラハ・セレーノ
母の死をきっかけに、写真と父親を避けてきた十六歳の少年。転入初日、三毛猫を追って廃部寸前の写真部へ迷い込む。考えるより先に動く性格で、正しさを急ぐあまり、相手の気持ちを置き去りにしてしまうこともある。
◆シャナ・ヴェルド
部員一名となった写真部を守る、冷静で几帳面な部長。写真を撮る前には必ず本人の許可を確認する。普段は隙がないが、猫を前にすると語尾が幼児語になる。
◆ジョウナス・レイ
陸上部と写真部を兼部する、前向きすぎる助っ人。失敗を笑いに変え、人と人の間へ自然に入っていける。運搬要員として扱われがちだが、誰かの話を真剣に聞ける人物でもある。
◆アルフレイドウ・モラ
学院の用務員で、旧写真部の関係者。ファラハの母が遺した十二通の封筒を、八年間隠し続けていた。
◆ユー
右前足だけが白い三毛猫。赤い毛糸と生ハムが大好き。鍵を掛けたはずの部室へ入り込み、過去から届いた封筒を一通ずつ運んでくる。
【あらすじ】
転入初日、十六歳のファラハは、赤い毛糸の首輪を着けた三毛猫ユーを追い、廃部寸前の写真部へ迷い込む。
そこで見つかったのは、八年前に亡くなった母が撮影した写真と、「一通目」と記された未送付の封筒だった。
封筒は全部で十二通。
写っているのは、怒鳴るパン屋、実験に失敗した教師、泣き顔を隠す料理人――本人が見たくないかもしれない、失敗と後悔の瞬間ばかり。
廃部まで、あと三十四日。
写真部を存続させるため、ファラハたちは写真の宛先を捜し、一人ずつ本人へ届けることになる。
けれど写真は、写っているものすべてが真実とは限らない。
善意で撮った一枚でも、見せることで誰かを傷つけることがある。
返すのか、残すのか、捨てるのか。
展示するのか、誰にも見せないのか。
その答えを決めるのは、写真を撮った者ではなく、写された本人だった。
やがて十二通の封筒は、八年前に町で起きた災害と、ファラハの母の死、そして離れ離れになった父子の過去へつながっていく。
これは、過去を暴く物語ではない。
猫と写真部の仲間たちが、撮れなかった一枚の続きを探し、止まっていた町と家族の時間を少しずつ動かしていく、