あらすじ
過労死した理論物理学者・藤原理沙(27)が目を覚ますと、乙女ゲーム『星律のエデン』の悪役令嬢アストレアになっていた。
全ルート断罪確定。処刑か追放。例外なし。
——しかし、この世界には前世にはなかった「おかしなこと」がある。
湯気がまっすぐ昇らない。噴水の水が上に跳ねる。空の色が理由もなく変わる。
この世界では「律」と呼ばれる何かが、物理法則の強さを場所ごとに変えている。
前世の物理学は、そのままでは通用しない。
けれど——法則の「壊れ方」にパターンがあるなら、それは新しい法則だ。
観測する。記録する。検証する。
恋愛フラグの攻略ではなく、世界そのものの解明で、断罪の未来に挑む。
悪役令嬢の断罪回避に必要なのは、恋愛力ではなく物理学でした。
◆主な登場人物
アストレア・ヴァン・エルデシュタット
辺境伯家の長女、十五歳。中身は前世で過労死した理論物理学者・藤原理沙(二十七歳)。処刑か追放の二択に対し、恋愛攻略ではなく観測と検証で挑むことを決める。
セレン・アルヴァレス
王太子にして婚約者。夢の中で、わたくしに死を宣告した人。公正であろうとするあまり、いつも少し疲れた顔をしている。
フィリーネ
従妹で、侍女で、幼馴染。毎朝扉をノックして名前を呼んでくれる——前世にはいなかった存在。
ディートリヒ
護衛騎士。無骨で口が悪く、理論は分からんと言い張るくせに、人の嘘だけは見抜く。口癖は「飯食ったか」。
リーゼロッテ
学院の転入生。善良で明るく、悪意の一片もない娘。なぜか彼女の周りでは、律が「揃う」。
ノエル
夜の花壇にいる、物静かな庭師の少年。彼が世話をする花は、なぜか育ちすぎる。
カイ
深淵圏から来た交流生。寡黙。曰く、「石に聞け」。
タマラ
同じく深淵圏から来た交流生。安定圏の「まっすぐな壁」に憧れる、明るいムードメーカー。
ルーカス
観測機器を愛する級友。口癖は「データは嘘をつかない」。かつて故郷を、律の崩落で失っている。
エミール教授
自然哲学の教授。律を「学問」として扱う数少ない大人。アストレアの頭脳に最初に気づいた人。
◆世界観
律(りつ)——物理法則の「強さ」を場所ごとに決めている何か。この世界の住人にとっては、天気と同じくらい当たり前のもの。
安定圏——律が高く、法則の揃った土地。王都。湯気はまっすぐ昇り、空は動かない。
遷移圏——律が揺らぐ辺境。測った通りにいかない日がある。アストレアの故郷。
深淵圏——律の低い遠い土地。ものの落ち方さえ、ここの常識では測れない。
◆読みどころ
・悪役令嬢もの×ハードSF。数式は出てきません。出てくるのは、湯気と、噴水と、星の揺れ。
・婚約者の王太子、無骨な護衛騎士、深淵から来た級友たち——立場も信じるものも違う人々との、掛け合いと信頼の物語。
・断罪回避では終わりません。その先に、この世界の秘密が待っています。
※恋愛・学園・政治・宇宙物理が交差する、新感覚の異世界転生物語。