あらすじ
i)登場人物の紹介 ii)あらすじ
i)登場人物の紹介
【茉琴】
川辺村の茶楼を手伝うオカリナ職人。母の形見のオカリナと、川辺で拾った透明な石を使い、水の濁りや器のひび、地中の空洞を音から聞き分ける「響き見」の技を持つ。身分の高い者にも必要なことは伝える芯の強さがある一方、恋には臆病。
【遥人】
琥珀皇国の第三皇子。冬の灯りを支える黒油管と、皇都の水路整備を任されている。物静かで礼儀正しいが、庶民の買い物では値切りに失敗し、茉琴に何度も助けられる。茉琴の珍しい技だけでなく、人の命を守るために動く姿へ惹かれていく。
【省吾】
茉琴の幼なじみで、川辺村の農家の息子。水路修理に詳しく、茉琴を誰より近くで支えてきた。皇子である遥人を警戒するが、泥や雪の中で共に働く姿を見て、少しずつ認めていく。
【明星】
宮廷の星読寮を率いる上位官。黒油管事故と水脈異常の記録を政争に利用し、茉琴の「響き見」を村娘の迷信として退けようとする。
ii)あらすじ
年の瀬の朝、川辺村の茶楼で働く茉琴は、川辺で透明な石の欠片を拾う。
母の形見のオカリナを吹くと、石は鈴のような音を返した。しかし、村の井戸水へ近づけた瞬間、その響きは不吉に濁る。
茉琴の音を聞いていた旅装の青年・遥人は、彼女が器のひびや水の異変を聞き分ける姿に興味を持つ。値切りが下手で、茶代の相場も知らない変わった青年。その正体は、琥珀皇国の第三皇子だった。
皇都では、冬の灯りを支える黒油管、北山から流れ込む火山灰、地下に残された旧水路が原因となり、井戸水の異常が広がっていた。さらに、子どもたちへ配られた観測具「掌鏡」の記録まで、宮廷内の何者かによって消されている。
村の水を守るため、茉琴は遥人の招きに応じて氷晶宮へ向かう。
宮廷で待っていたのは、茉琴の音を迷信と笑う官僚たち、隠された病人の記録、消された職人の名前、そして遥人に持ち上がった政略婚の話だった。
茉琴は硝子職人、記録官、農家、井戸番、学舎の子どもたちと力を合わせ、音だけに頼らず、台帳、図面、掌鏡を重ねて真実を確かめていく。
やがて完成したのは、水の異常を硝子の雪で知らせる「熱いスノードーム」。
村娘の音は、皇都の水と人々の命を救えるのか。
そして茉琴は、高貴な皇子に選ばれるだけではなく、自らの仕事も故郷も手放さず、遥人の隣で生きる道を選べるのか。
これは、名もなき職人の音が国の仕組みを変え、身分の違う二人の心を結ぶ、温かくて少し笑える宮廷恋愛物語。