あらすじ
オルデル王国の婚姻契約は、一年ごとに双方の署名がなければ更新されない。
アーレン公爵アルノルトと七年間の政略婚を続けたリディアは、毎年、いつか心が通じることを願って署名してきた。客の食事の禁忌、家族の節目、過去の対立、送るべき弔意。夫が公務だけに集中できるよう、彼女は誰にも数えられない仕事で公爵家の信用を支えていた。
けれど母の葬儀にさえ夫は来なかった。七度目の更新日、リディアは初めて署名欄を空白のままにする。
妻を失ったアルノルトは、空席、届かない私信、失敗する晩餐を前にして、ようやく七年分の献身と自分の愛に気づく。報酬を増やした再契約も、旧友を通した仲介も届かない。それでも彼は謝罪し、初めて「愛している」と告げる。
一方、出生名へ戻ったリディアは、国境の文化会館で歓待を正式な仕事として引き受ける。選択肢と断る権利を渡す市長マティアスとともに、自分の名で人が争わず帰れる卓を作っていく。
反省が本物でも、謝罪を受け取っても、終わった人生へ戻る義務はない。