あらすじ

七夕を避け続けて三年。母を病で亡くして以来、「願っても叶わない」と信じるようになった悠は、祭りにも人の輪にも距離を置いて生きていた。父は仕事に没頭し、幼い妹ひなたの世話は自然と悠が担うようになるが、心はどこか止まったままだった。そんな中、宵宮の日、ひなたに誘われて渋々祭りへ向かう。賑わいの中でも現実感を持てない悠だったが、無邪気に笑うひなたの姿に、少しずつ心が揺らぎ始める。  やがて笹飾りの前で、ひなたの短冊に書かれた「お兄ちゃんが、また笑いますように」という願いを目にし、悠は言葉を失う。その夜、封じ込めていた母の遺した箱を開けると、そこには「この子たちが、私がいなくても笑っていますように」と記された、誰にも見せていなかった母の本当の願いがあった。自分のためではなく、最後まで家族を想い続けた母の姿に触れ、悠は初めて、願いとは叶うかどうかではなく、誰かを想う行為そのものに意味があるのだと気づく。  数日後の本祭り。悠は再び短冊を手に取り、「お母さん、私たちは大丈夫です」と、そして「俺も、ちゃんと笑えるようになりたい」と書く。自分のために願うことを受け入れた瞬間、止まっていた時間がわずかに動き出す。ひなたの「お兄ちゃんが、笑ってくれてうれしい」という言葉に背中を押され、悠はようやく、家族とともに生きる未来へと歩み出す。空に届かないはずの願いは、それでも確かに人の心を繋ぎ、明日へと続いていくのだった。

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エブリスタ
エブリスタ2026/07/20
  • 現在の作品届かなかったはずの願い