あらすじ

カビと鉄の匂いが漂う衰退した地方都市・水無瀬市。  元天才セキュリティエンジニアの榛名創と、感覚過敏の元学芸員・御子柴凛は、古い鉄工所跡の事務所で、生前葬り去りたいデジタルデータや黒歴史をセクタレベルで完全消去する特殊情報清掃会社『白露アーカイブス』を営んでいる。  二人は互いの暗い過去に触れない「踏み込まないルール」を守りつつ、軽ワゴン車・エブリイを走らせて任務をこなしていた。  ある日、高校生の佐々木琴音から、孤独なプログラマーだった亡き兄・翔太が遺したPCの消去依頼が届く。 PCを起動すると、調律の狂ったショパンの『ノクターン』と共に、翔太が自身の精神崩壊を防ぐために十年間育成し続けた、少女の合成音声AI『ノクターン・システム』が語りかけてきた。  琴音の望みは完全消去だが、榛名は凛に指示し、消去の直前にAIのコアデータを極秘に暗号化コピーして「保全」する。  保全したデータのノイズ領域を解析した結果、数年前、凛が公立美術館で贋作事件を告発しようとして逆に業界から抹殺された際の「本物の証拠(X線透過データ)」が発掘される。 凛は復讐ではなく、証拠を榛名の引き出し(オフライン・データベース『マスターシード』)に匿うことを選択し、二人の信頼は深まる。  続いて、古い印刷所跡から15年前の中学校の「裏・卒業文集」を粉砕消去した際、それが当時の女子生徒の転落死(いじめ)の証拠であり、発注者が現・三中の田中校長であることが発覚。 さらに田中校長から、現在進行中のいじめ隠蔽用のサーバーログ消去依頼が届く。  榛名たちは学校に乗り込み、依頼を遂行するフリをして証拠ログをすべて抜き出し、教育委員会と弁護士に匿名で送信して悪意を暴く。  役所から旧・南水無瀬村の住民台帳の消滅証明を依頼された二人は、合併時に市が産業廃棄物の不法投棄区域と住民の存在を抹消した「行政の巨大な黒歴史」に直面。 凛は、消え去るデータの中から「桜祭りの写真」と「子供の作文」をこっそり救出し、榛名はそれを暗号化セクタへマウントする。

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エブリスタ2026/07/20
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