あらすじ

効率よく生きているつもりの人ほど、恋には迷う。 下北沢の雑居ビル「NOAK下北沢」。一階の食堂バー「フラココ」と、三階の恋愛サポート会社「Kizuna Lab」を舞台に、五組の男女が、それぞれ近道のつもりで選んだ道の先で、思いがけない迷い道に迷い込んでいく連作恋愛コメディ。 商社マン・法月蒼は、婚活を「案件」として管理し、スプレッドシートで相手を分類する男。お見合い十四連敗中の彼が、フラココで出会ったのは、条件でも効率でも測れない生花デザイナー・東雲日和だった。 マッチングアプリに三年疲れ果てた宮下つばさは、退会直前、ふと三年前に一度だけやり取りした相手の正体に気づく。答え合わせは、アプリの外――同期入社の同僚・芦田陸との、社内での思いがけない再会という形でやってくる。 バツイチでミドル世代向けアプリに登録させられた桐生満と、シングルマザーの日野聡子は、婚活パーティーよりも先に、塾の送迎で顔を合わせてしまう。条件のすり合わせばかりを優先してきた二人の背中を押したのは、他でもない、それぞれの子どもたちだった。 2.5次元アイドルに三年間課金し続けてきた七海ひなのは、担当グループの解散をきっかけに、隣で静かに話を聞いてくれる橋爪湊の存在に気づいていく。「担当は絶対に裏切らない」と言い切っていたはずの彼女にとって、生身の相手を好きになることは、これまでの人生設計にはなかった迷い道だった。 そして、AI恋愛相談チャット「コイモン」の開発者・神崎悠人は、自作のAIに片想いを打ち明け続け、本人にはずっと何も言えずにいた。誰よりも人の恋を後押ししてきたカウンセラー・真中まどかもまた、自分の恋愛だけは近道できずにいる。二人を動かしたのは、店主・登紀子の遠慮のない一喝だった。 効率よく、最短で、遠くへ手を伸ばしていたはずの五組。けれど答えは、いつも近くにあった。タイパでは測れない感情だけが、確かにそこにあった――。フラココという小さな店を起点に、不器用な恋が、少しずつ形になっていく。近道のつもりで踏み出した一歩が、気づけば一番遠回りな、そして一番幸福な迷い道になっていた。

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カクヨム
カクヨム2026/07/20
  • 現在の作品タイパ、こじらせ、婚活中