あらすじ

聞こえていた。——生まれたときから。 波の音で天気が分かった。 足の裏で道が分かった。 風の向きで、嵐が来ることも。 全部聞こえた。——全部、黙っていた。 末の子だった。四人兄弟の四番目。 兄は声がでかい。次兄は弓がうまい。三番目は何でも面白がる。 俺は——聞こえるだけだ。聞こえたところで何も変わらない。 だから黙っていた。四十五年。 祖父が死んだ。花びらと、歪んだ針と、潮の珠を残して。 妻が死んだ。息子を残して。 四十五歳の秋、浜に老人が現れた。 祖父を海に送った、あの老人が。 「東に美しい国がある。——行くか」 兄が船を出した。俺は船の後ろで波を聞いた。

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小説を読もう2026/07/20
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