あらすじ
空の色が、二度瞬いた。
同じ雲が、二つの位置にあった。
同じ鳥が、違う軌道で飛んでいる。
世界が、わずかに重なっている。
――おかしい。
そう思った瞬間、胸の奥に冷たいものが落ちた。
見慣れたはずの風景なのに、どこかが定まらない。
遠くの建物が揺らぐ。
崩れているようにも見えた。
立っているようにも見えた。
どちらも正しく、 どちらも間違っている。
柳端は息を止める。
風が吹く。
だが、その風さえ、一度では届かなかった。
何かが起きている。
まだ名前のない異変が、 世界の奥で静かに軋んでいる。
柳端は空を見上げた。
空は裂けていない。
街も崩れていない。
それでも。
何かが、もう始まっていた。