あらすじ
日本で事故死した青年・朝倉湊は、剣と魔法の異世界「エルディア」に転生する。勇者として選ばれたわけでも、魔王討伐を命じられたわけでもない。授かった固有能力は、毎週一度、日曜日の二十四時間だけ日本へ帰還できる「日曜帰還」だった。
帰還先は日本国内のどこか。目的地を完全には選べず、その週の心身の状態や願いに引かれるように、北海道の雪山、南国の海、地方都市、温泉街、ときには実家の近くへ飛ばされる。日本で使える予算は原則一万円。異世界通貨が自動換算され、アイテムボックスから現金として取り出せる。日本で正当に購入した品物だけは、アイテムボックスに収納して異世界へ持ち込める。
平日は冒険者として迷宮を攻略し、食料、鉱石、薬草、布、魔石などの物資を得て生活する。迷宮は世界の秘密を隠す神殿ではなく、社会を支える「再生する資源地」である。攻略を止めれば内部の魔物が増殖し、やがて迷宮外へ氾濫する。そのため冒険者は英雄ではなく、資源採取者、害獣駆除者、災害予防員を兼ねた生活職となっている。
物語の主軸は、世界を救うことではない。主人公が仲間と迷宮を攻略し、仕事を覚え、家を持ち、恋をし、戦争や政治に巻き込まれながらも「自分の生活」を守っていくこと。そして日曜日には、限られた予算で日本を遊び、休み、買い物をし、ときどき家族と再会すること。異世界冒険譚と日本全国の小旅行が、一週間のリズムで交互に積み重なる長編生活ファンタジーである。