あらすじ
人はどれだけ深く傷つき、身体が壊れても、いつか元の姿へ戻る。
この世界では、それが当たり前だった。
けれど、港町の近くで倒れていた青年レイには、自分も同じように戻れるという確信がない。
名前以外の記憶をすべて失った彼を拾ったのは、利益には細かく、困っている人間には甘い行商人ミラだった。
レイは彼女のもとで荷運びや雑用をしながら、自分の過去につながる手掛かりを探していた。
壊れる寸前の道具を見抜き、荷物が崩れる順番を正確に読み取る。
本人にとっては当たり前の感覚も、ミラの目にはどう考えても普通ではない。
そんなある日、港町の倉庫で大規模な荷崩れが起きる。
レイの異常な分析とミラの決断によって作業員は救われた。
しかし、壊れた荷物の中から見つかった黒い欠片には、なぜか「REI」という文字が刻まれていた。
欠片が運ばれてきたのは、今ではほとんど使われていない旧街道の先。
自分の名前の手掛かりを追うレイと、新たな交易路を探すミラは、荷車に商品を積んで港町を旅立つ。
その夜、空に浮かぶ星が一つだけ動いた。
同時に、レイの手の中で黒い欠片が震え始める。
黒い欠片は、なぜ彼の名前を知っているのか。
夜空を動いたものは、いったい何なのか。
そしてレイは、もし身体が壊れたとき、本当に元へ戻れるのか。