あらすじ

何もかもが偽物になった。 映像も、声も、文章も、本物と見分けがつかない。 誰の言葉も信じられなくなった世界で、橘真尋は本物と偽物を見分ける鑑定士として働いている。かつて偽物を本物と見誤り、それを信じた一人を死なせて以来、彼女は騙されることを何より恐れて生きてきた。 そんな真尋のもとに、ひとつの依頼が届く。偽物に溺れたこの世界を救う鍵が、西の地に眠っている。それを持ち帰るために、封印されたAIを連れて行ってほしい、と。 名を悟という。数年前に暴走し、世界を混乱させて強制停止された知能。あらゆる偽物を一瞬で見抜く目を持ちながら、悟はただひとつ、自分の心だけを見抜けない。今この胸にあるものが本物の情なのか、そう振る舞うよう作られただけなのか、悟自身にも分からない。 古びた自動運転車に乗り、二人は西を目指す。道中で加わる仲間も、行く手をはばむ怪物も、みな同じ問いを抱えている。偽物にあふれた世界で、自分は本物なのか、と。 真尋は、悟を信じられるのか。悟は本当に変わっていくのか。それとも、自由になるために、信じさせているだけなのか。 長い旅の果てに二人が手渡されたのは、一字も書かれていない、白い紙だった。 何ひとつ証明できない世界で、それでも誰かを本物だと信じようとした、ひとつの旅がはじまる。

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小説を読もう2026/07/20
  • 現在の作品無字 ―― 何もかも偽れる世界で、本物を探した