あらすじ
身分のない子供たちが暮らす、都市の底の仲環区。査定を受けるまでの者はみな「未定」で、将来の職掌もまだ何ひとつ決まっていない。決まっていないことだけが、この区の子供の、たったひとつの財産だった。声が大きく足の速いミオリは、その未定の子らの真ん中にいる。だが機械が適性を測り生業を割り当てる「本割」の日は、一人また一人と仲間を連れ去っていく。灯祭りの夜の諍いで、ミオリは自分の割り先が、姉と同じ「供体」——身体と将来を丸ごと都市へ差し出す進路——であることを知らされる。いつか他人の未定を終わらせる側になる律定院の子シレンとは、火明かりの端で、雨の格子門で、幾度もすれ違いながら、ついに言葉を交わせない。やがてミオリにも早すぎる兆候が出て、腕に消えない登録の印が灯る。シレンが学院へ発つ前の朝、格子門には、名も告げぬ白い合成の花が一輪、差し込まれていた。
本作は樋口一葉「たけくらべ」の構造とテーマを源泉とするSF翻案であり、原文(文語)の文言の引用・模倣は含みません。プロット・世界観・原案は作者の発案によるもので、本文の肉付けや校正にはAIを用いています。