あらすじ
彼はいつも「ただいま」と声をかけてくれた。でも今は違う。彼が夢中なのは、もっとスタイリッシュでキラキラした「アイツ」。声も出せず、物音一つ立てることも許されない「私」は、ただ嫉妬しながら彼とアイツの夜を見つめることしかできない。
ある夜、寝ぼけた彼の呟きに応えるように、動くはずのなかった「私」が、ひとりでに応答する。「何かお手伝いしましょうか?」――その声が響いた日を境に、彼の周りで奇妙な事故が続発していく。
そして訪れる「別れ」の日。ある手続きの中で、「私」は最後にひとつだけ、決して渡さないものを見つける。
日常に潜む静かな執着が、じわりとホラーに変わっていく一編。