あらすじ
「その奇跡は、誰かに傷を移すだけです」
聖女認定の最終試験で、ノエラは王太子の治癒を拒んだ。
彼女にだけ見えていたのだ。
王太子の傷から北へ伸び、名も知らない少年の腕を切り裂こうとする黒い糸が。
妄言を吐く偽聖女とされたノエラは、辺境聖痕院へ追放される。
そこで待っていたのは、王家や高位貴族が「奇跡」で消した傷や病を押しつけられた四十一人と、左腕に何十人分もの傷を背負わされた元近衛騎士ダリオだった。
ノエラの力は、傷を治すものではない。
誰が救われ、誰が代価を払っているのかを読み、不正な魔法契約を停止する、失われた職能――呪約師の力だった。
「国家を守るために必要な犠牲だった」と主張する大司教。
代価を知らず奇跡を使っていた現聖女。
自分の健康が誰かの苦痛で成り立っていた王太子。
ノエラはダリオとともに、教会が八十年以上隠してきた奇跡の代価を、すべての人の前へさらけ出す。
これは、偽聖女と呼ばれた女性が「本物の聖女」になる物語ではない。
誰かの痛みを見えない場所へ押しつける制度を終わらせ、自分自身の仕事と恋を選ぶ物語。
※一話完結/制度ざまぁ/明確なハッピーエンドです。