あらすじ
東京でローカルアイドルとして活動し、メジャーデビューを目前にしていた比留間凛々子は、ある事件をきっかけにその道を断たれ、沖縄の芸能事務所へ移籍する。芸名は「与那覇リリー」。かつて大手スーパーのキャンペーンガールを一年間務めたものの契約は終わり、今は単発のイベントやホテル営業を重ねながら、先の見えない日々を送っていた。
そんな凛々子が過労で倒れたと知り、東京から幼なじみの内野大河が沖縄へやって来る。大河は高校卒業後、仕事を転々とし、どこにも根を張れずに生きてきた男だった。凛々子を助けるつもりで来たはずが、自分自身も行き場を失い、那覇の塗装会社・大城工業に住み込みの見習いとして拾われる。
華やかな芸能の世界にいるようで、実際には営業、契約、失敗、生活費に追われる凛々子。職人たちに叱られながら、初めて一つの仕事を続けようとする大河。幼い頃に互いを思っていた二人は、再会しても昔のようには戻れない。相手を救うことも、素直に寄り添うこともできないまま、それぞれの場所で少しずつ変わっていく。
石垣島出身のクール担当アイドル・村雨蒼、ある秘密を隠したビューティー担当の・真紀子、大城工業の社長夫妻や、沖縄で店を営む人々。さまざまな土地から来た人たちの人生と出会う中で、凛々子は「リリー」という仮面の外にある自分の言葉を探し、大河は逃げ続けてきた生活に足場を作ろうとする。
沖縄の光や風、食、仕事、芸能、土地に根づく文化を背景に、夢につまづいた女と、何も続けられなかった男が、働き、人と出会い、不器用に居場所を築いていく。これは、誰かを支えるだけでは届かない思いと、小さな現実を積み重ねながら再び前を向く二人を描いた、静かな青春再生の物語。
この物語は、映画『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』から、沖縄の空気や人の情、そして物語の着想の一部をいただきました。