あらすじ
この夏、村はダムの底に沈む。大学生の岬りおは、祖母の葬式のため七年ぶりに故郷の水無瀬へ帰った。川べりで彼女を待っていたのは、信仰を失い、十歳の子どもの姿にまで縮んでしまった水神・みずち。毎朝水を汲んで語りかけてくれた祖母――最後の語り部を失ったみずちは、村とともに消える運命にあった。祖母が遺した古い木箱の底から、二十年前に絶えた夏祭りと「水無瀬の水謡」の記録を見つけたりおは、沈む村で最後にもう一度だけ、祭りを甦らせると決意する。たった五人と、消えかけた神さまの手で。喪失を継承へと変える、ひと夏の物語。あなたは、水の底に沈んだ村の名前を、まだ覚えていますか。