あらすじ
王太子の花嫁として十二年間、国の安寧を祈り続けてきた公爵令嬢レティシア。
ある日、神の声を聞くという聖女候補が現れた。
「偽りの花嫁を国外へ出さなければ、国を守る神の力は失われる」
突然下された神託により、レティシアは王太子との婚約を解消され、爵位と家名まで捨てることになる。
父は王家に逆らってでも娘を守ろうとする。
しかしレティシアは、公爵家と領民を巻き込まないため、自ら国を出る道を選んだ。
国境を越えた先で彼女が見つけたのは、道端に倒れていた一人の男だった。
伸びきった黒髪に、泥まみれの服。
どう見ても行き倒れの浮浪者だった。
見知らぬ男を放っておけなかったレティシアは、宿へ連れていき、食事を与え、傷の手当てをする。
男は自分の名前すら語らない。
世間のことも何一つ知らない。
それなのに、なぜかレティシアのことだけは知っていた。
「おまえの祈りは、ずっと聞いていた」
一方、レティシアを追放した王国では、魔物の襲撃や干ばつが相次ぎ、国を守っていた神の力が急速に失われていく。
王太子たちはまだ知らない。
自分たちが国外へ追いやった令嬢こそ、神が守り続けていた唯一の人間だったことを。
そして彼女が拾った浮浪者こそ、この国を長きにわたり守ってきた神だったことを。
すべてを捨てさせられた令嬢と、人間を見限った神。
二人の貧しい暮らしは、やがて王国の運命まで変えていく。