あらすじ

「ヴェンデル様のお言葉を、そのまま申し上げます。――『君では家格が釣り合わなかった』と」 子爵令嬢マレーネ、十八歳。婚約披露の三日前に、侯爵令息から破棄された。 しかも本人は来ない。仲人の口上ひとつである。 この国の縁組は、披露と登記で初めて公になる。それまでは書面一枚残らない私的な仮婚約―― 破棄の履歴は、どこにも残らない。 おまけに翌日には「マレーネ嬢の作法に難があった」という噂が、社交界を先回りしている。 騒げば「金惜しさに縁談を騒ぎ立てる家」の烙印。妹の縁談が潰れる。 両家とも、恥として伏せるしかない――そういう仕組みなのだ。 烙印に耐えて一か月。差出人のない招待状が届く。 『同じ傷をお持ちの方へ――お茶会のご案内』 指定の屋敷で待っていたのは、初対面のはずなのに、鏡のような顔が六つ。 あの家門に破棄された歴代の仮婚約者、六人。 全員が、同じ仲人、同じ口説き文句、同じ「披露の三日前」、一字一句同じ悪評で沈黙させられていた。 つまりあの婚約は、家門ぐるみの家業である。 会の掟は二つ。 八人目を出さない。泣き寝入りの顔は、今日で終い。 折しも王都には、七年前から仲人網の金の流れを追いながら、記録も証言もゼロで歯噛みしてきた縁組監察官がいた。 「単独の証言は『破談の恨み』で片づけられます。ですが、同じ型が七つ並べば――偶然ではなく、設計です」 「あら。では安全になった順に、一人ずつ差し上げますわ」 一度聞いた言葉を一字一句忘れない「記録役」の七人目と、歴代の先輩方。 議事録の第一項が毎回「本日の焼き菓子」の、表向きはただの「同窓会」が、 家業の次の縁談を先回りで潰し、止まった人生をひとつずつ巻き直していく。 被害者の会、本日も和やかに開廷である。

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小説を読もう2026/07/19
  • 現在の作品わたくし、あの方の「七人目」だそうです ~歴代婚約者の会にようこそ。本日の議題は「八人目を出さない」~