あらすじ
異世界レムリスには、現代日本から人間を召喚する魔法装置〈星喚炉〉がある。装置は起動のたび世界中の魔力を燃料として奪い、召喚された者にはランダムな魔法が一つ与えられる。
五年前に召喚された十人の勇者は、しかし魔族を討伐しなかった。リーダーの勝村零が〈未来視〉で知ってしまったからだ――魔族を滅ぼせば、元の世界に帰る装置は永遠に完成しないと。以来、彼らは魔族を守り続け、人類から「裏切りの十人」と憎まれている。その戦績、0勝0敗。全戦全逃。人は彼を「零勝(れいしょう)」と嘲笑った。
業を煮やした人類は、装置を再起動して新たな勇者を召喚する。その一人が、大学生・冷泉匠。元の世界で一度も熱くなれなかった皮肉屋は、規格外の氷結魔法と「必要とされる居場所」を手に入れてしまい――帰還を望まない、史上初の勇者となる。
帰りたい男は、魔族を生かして帰還の日を手繰り寄せる。
帰りたくない男は、魔族を凍らせて帰還の日を白紙にする。
そして零勝の未来視には、冷泉が召喚されたその瞬間から、世界が氷に閉ざされる未来しか映らなくなった。
これは、勝たない勇者と笑わない英雄が、たった一本の「氷ではない未来」を奪い合う物語。