あらすじ
かつて、大陸の空にはたくさんの竜が飛んでいた。
山脈を越え、嵐を裂き、戦場を抜け、人々の手紙や荷物を届ける竜便士たち。
空を渡る竜の背に手紙や荷物を積み、山脈も海峡も戦場も越えて届ける竜便士たちは、人々にとって憧れの職業だった。
ーーだが時代は変わった。
魔導鉄道が大陸を結び、転送塔が瞬時に荷物を運べるようになると、遅く、危険で、維持費のかかる竜便は急速に廃れていった。
かつて誇り高く空を駆けた竜たちは「役目を終えた遺物」とされ、老いた竜から順に処分場へ送られることになった。
ベル・クライン、六十歳。
かつて「銀翼のベル」と呼ばれた伝説の竜便士も、今では廃止寸前の竜便局で管理人同然の日々を送っていた。
腰は痛み、夜目は利かず、魔導端末の使い方もろくにわからない。
妻を亡くし、残ったのは腰痛と、かつて共に大陸を駆けた老竜テラだけ。
そんなある日、正式に竜便局の廃止が決まる。その整理作業の最中、ベルは地下倉庫で古い木箱を見つける。
箱の中に入っていたのは、戦争、災害、失踪、町の消滅によって届けられなかった「未配達便」だった。
ベルは処分場へ送られるはずだった老竜テラを連れ出し、未配達便を荷袋に詰め、大陸横断の旅に出ることに。