あらすじ
『――聖女ミレイユ。お前の癒しの力は、もはや不要だ』
王太子から婚約破棄され、聖女の座を剥奪されて国外追放を言い渡された私。けれど、内心は驚くほど凪いでいた。だって、私の"癒しの力"は神授のギフトなんかじゃない。前世で製薬会社の研究員だった知識による、薬草の調合。誰にも奪えない、私の頭の中にあるもの。
(もう、この国のために消耗するのはやめます)
偽りの光で聖女に成り代わった男爵令嬢と、それを信じる愚かな人々に、私は完璧な淑女の礼をして背を向けた。
(あなたたちが青ざめる顔、二百年越しに拝見しますから)
国境の『虹霧の谷』で見つけたのは、七色の門の形をした虹――時を渡る回廊だった。強い後悔と決意を持つ者だけが渡れるという、その扉。報われなかった後悔と、二度と誰かのために消耗しないという決意を胸に、私は光の中へ足を踏み入れる。
たどり着いたのは、この国が生まれる前の建国期。死の匂いに満ちた辺境の村で、薬草の知識を武器に、私は"私だけの人生"を築きはじめる。そして出会う、金色の瞳を持つ竜人ジークハルト。
他人のためではなく。私と、この人のための――国を。
さあ、第二の人生の、本当の始まりですわ。
知識チートで痛快、それでいて胸温まる転生聖女ファンタジー。時を越えた再会の物語を、どうぞ。