あらすじ
「役立たずの巫女は不要だ。神を返上し、神殿を去れ」
二十年間、無給・無休で消えゆく古き神シェストを宿し続けてきた巫女ミレイユ。新たな聖女の召喚を機に、大司教から冷酷に追放を言い渡されます。
しかし、彼女は取り乱すことも、涙を流すこともありません。深々と一礼し、穏やかな微笑みを浮かべてこう告げるのです。
「かしこまりました。では――神様ごと、辞めさせていただきます」
実はミレイユは、二十年前の契約更新の際、ある一文をひそかに仕込んでいました。彼女が去れば、国を守る結界の礎となっていた神の加護は――即座に、消える。
地味で、目に見えず、けれど途切れることのなかった継続の加護。その真の価値に、傲慢な神殿の者たちは誰も気づいていませんでした。
二十年分の帳簿を小脇に抱え、衰弱した幼い神様とともに、ミレイユは神殿を後にします。向かう先は、彼女を必要としてくれる場所。真実を見てくれる人のもとへ。
「地道な継続こそが、いちばん強いのですわ」
残された王都では、まだ帳簿が合わずに右往左往する人々がいるとか、いないとか。ですがそれはもう――彼女の知ったことではございません。
淡々と、優雅に、そして痛快に。有能すぎる元巫女が贈る、静かな復讐と再出発の物語。