あらすじ
壊される痛みを、誰よりも知っている少女がいた。
――カラタチ・タチネ
王立魔導工房で神童と呼ばれていた少女。
かつて国から直々に依頼を受け、二年の歳月をかけて魔導炉を完成させた天才技師。
しかしその作品は、一人の転生者によって「面白半分」に壊された。
あの日から三年、タチネの心は止まったまま、王都の受付でただ淡々と「壊れた鑑定具」を片付ける日々を送っていた。
そんな彼女の前に、再びあの男が現れる。
転生者・スズキ・リオン。
かつてタチネの魔導炉を壊し、そして今、涼しい顔で鑑定具を何台も壊し続ける規格外の存在。謝罪の言葉すら「最低でした」の一言で片付ける、感情の読めない男。
三年間抑え続けた怒りが爆発するタチネ。
だが、ぶつけた言葉の先で彼女が見たのは、リオンもまた「表現する手段を奪われた」者だという事実だった──。
技術者の再生と、誰も気づいていない世界の異変。
二つの物語が、静かに交わり始める。