あらすじ
王威を持つ王を失い、天象の狂った国アレーティア。雨の途絶えた山奥の村は、あと一週間で水が尽きる。先の天候を観る力と、地形や星の運行を読み解く知識を持つ十二歳の少年リルテは、持てるすべてを使って最後まで村を救おうとしていた。だが、父に託された「生きていてくれ」という願いを胸に、ひとり山を下りる。
リルテは知識と計算力を頼りに山を越えたが、人の悪意も、社会の仕組みも知らなかった。善意に応える者もいれば、それを利用し、踏みにじる者もいる。それでも、困っている者を前にすると、手を伸ばしてしまう。リルテは騙され、奴隷として売られ、善意だけでは人を救いきれない現実にぶつかる。
未来を奪われかけたリルテを救ったのは、国を立て直そうとする青年ディスンだった。彼に導かれ、リルテは、知識や計算だけではすべての答えに届かない世界で、誰かを頼り、人の中で生きる方法を学び始める。
やがて、告げられる。
「――王になれ」
王位と国の行方をめぐる権謀と戦火の中で、何を救い、何を選び、何を手放すのか。
リルテは、優しさを失わず、選ぶ者になれるのか。
手を結び、手を放し、また結ぶ。人の中で「自分」を生き、やがて王へ至る少年の物語。