あらすじ

現代日本の夜には、法も警察も裁判所も届かない罪がある。 証拠不十分で逃げ切った殺人犯。金と権力で被害者を黙らせた加害者。未成年、示談、政治的圧力、世論操作、消された記録――あらゆる手段で裁きを免れ、何事もなかったように朝を迎える者たち。そんな“裁かれなかった罪人”のもとへ、ある日、誰にも知られない請求書が届く。 黒瀬怜。表向きは特殊清掃と遺品整理を請け負う寡黙な男。孤独死した部屋を片づけ、遺族が触れられない遺品を箱へ収め、死の痕跡を静かに消していく彼には、もう一つの顔がある。国家にも警察にも属さない秘密組織《無国籍審判会》日本支部第七執行室に所属する掃除屋――法の外側で審理された罪を執行する、処刑代行人としての顔だ。 依頼料は前払い。虚偽の申告は即時審判対象。復讐心だけの依頼は却下。無国籍審判会が裁くのは、依頼人の憎しみではなく、対象者が背負うべき負債である。黒瀬は死者の遺品に残された感情の残響を読み取り、消された証拠を拾い、泣き寝入りを強いられた者たちの声にならない叫びを、審理の場へ運んでいく。 そんなある夜、黒瀬のもとへ一人の老人が訪れる。娘を失った元教師、野崎善次郎。警察は娘・未央の死を自殺と判断した。しかし彼女が死の直前に残した一通のメールには、ある男の名が記されていた。 御影透真。 調査を進めるうち、黒瀬はその名の背後に、数十年前に封鎖されたはずの生体適応研究、国家が存在を消した“新人類”計画、そして無国籍審判会そのものの起源に繋がる痕跡を見つけてしまう。 金で命を奪う男は、正義の味方ではない。救済者でも、英雄でもない。 それでも、法が取りこぼした夜の底で、死者の沈黙を証拠に変える者がいる。 「依頼料は前払い。キャンセルはできません。それでもよろしければ――あなたの憎しみを、こちらで審理します」 これは、国家に捨てられた新人類たちが、国家の外側で罪を裁く物語。 そして、処刑代行人・黒瀬怜が、自らの失われた過去と、裁く者自身の罪へ辿り着くまでの記録である。

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小説を読もう2026/07/19
  • 現在の作品処刑代行人 - 無国籍審判会第七執行室 -