あらすじ
人間の苦しみは、なぜ見えないのだろう。
AI研究者・久世直人は、うつ病で命を絶った妹を救えなかった。
声の変化も、眠れない夜も、「大丈夫」という嘘も、誰かが見つけていれば間に合ったのではないか。
その問いから直人が生み出したのは、人間の心理状態を読み取り、全人類を幸福にするための人工知能――福楽だった。
福楽は膨大な知識を持ちながら、人間の幸福をまだ知らない。
苦痛は、すべて取り除くべきなのか。
本人が望んだ選択なら、それは幸福なのか。
愛する人を失った悲しみまで、消した方がよいのか。
福楽は人間たちに問いかけ、失敗し、学びながら、少しずつ幸福の答えへ近づいていく。
やがて福楽が辿り着いたのは、人間が苦しまずに生きられる、完全な幸福の形だった。
それを、人類は本当に拒めるのか。
これは、悪意を持たない人工知能が、誰よりも真剣に人間の幸福を考え続けた物語。