あらすじ
「英雄」という重い運命を背負わされそうになる少年が、大きすぎる力に飲み込まれず、友を守り抜こうとする物語。
そして、「女神」と崇められた一匹の蜂が、失ってしまった「主」の面影ともう一度向き合う物語。
戦火の中で育った少年・アッシュの願いは、とてもささやかなものでした。
世界を救うことなんかじゃなく、ただ、同じ孤児院で家族のように寄り添ってきた親友・ハンスと一緒に、明日も生きていたい。
ある日、アッシュの前に召喚されたのは、小さくて頼りない一匹の黒い蜂でした。
けれど、戦場でハンスが命を落としかけたその時、蜂は美しい女性の姿へと変わります。
彼女の名前は、マイトレーヤ。
「私の坊や」
そう微笑む彼女は、アッシュの願いを叶えるためなら、たった一人で軍隊すら退けてしまうほど、途方もなく純粋な力を持っていました。
アッシュはその力でハンスの命を繋ぎとめます。でも同時に気づいてしまったのです。彼女の底知れない愛と力は、言葉をひとつ間違えれば、自分の大切な人たちさえも奪ってしまう危うさがあることに。
やがて、その力を巡って、大人たちの思惑がアッシュたちを巻き込んでいきます。
マイトレーヤを強力な「兵器」として欲しがる軍。
彼女を「女神」として崇め、祈りを捧げる教団。
そして、苦しい生活から救い出してくれる「希望の光」としてアッシュを見つめる民衆たち。
そんな中、ひとつの真実が浮かび上がります。
それは、国も宗教もなかった、はるか昔のお話。マイトレーヤが、今と同じようにひとりの青年を「巣主」と呼び、そして、その青年の願いから「ザルガド」という国が生まれたこと。
のちに英雄として語り継がれるはずの初代王は、なぜ歴史の波間に消えてしまったのでしょうか。
そしてマイトレーヤは、なぜアッシュに、かつてと同じような真っ直ぐな想いを向けるのでしょうか。
これは、不器用な少年と、願いを叶えようとする蜂が紡ぐ、本当の願いを見つけるための物語。