あらすじ
他人に頼るのは弱さだと信じていた。
群れなければ生きられない有象無象を、心底しょうもないと見下していた。
――本当にしょうもなかったのは、私の方だったのに。
ラ・コルナ地方、ルナフォリア。
上層と下層に分かれた石造りの街は、年中どこか薄暗く、底冷えがした。
修道院の書物庫の隅で、ただ静寂と合理性だけを信じて生きていた司教の娘・リコリス。
完璧だったはずの彼女の計算式は、下層からやってきた妹・エルシーの纏う「蜂蜜の匂い」と、不条理なまでの無垢な信頼によって静かに狂い始める。
これは、のちに『冷徹なリアリスト』へと至る少女が、すべてをむしり取られ、泥のなかから反逆の逃避行へ踏み出すまでの――失われた「月の葉」の記憶。
(※本作は『300年後も鐘の音を』の過去外伝となりますが、単体でもお楽しみいただけます)