あらすじ
伯爵家に嫁いだエルヴィナ・セリアンは、夫から愛されない妻だった。
冷たい夫、妻を道具扱いする義母、助けるどころか「嫁いだなら耐えろ」と言う実家。
それでもエルヴィナは屋敷を切り盛りし、帳簿を整え、使用人をまとめ、妻としての責務を果たしてきた。
だがある日、夫の愛人候補として連れてこられた若い令嬢の“教育係”を命じられる。
「お前は妻なのだから、夫のために女を育てるのも役目だ」
その一言で、エルヴィナの中に残っていた最後の糸が切れる。
離縁後、亡き祖母の縁を頼って港町セレストーネへ向かった彼女は、女好きと噂される年上領主オルヴィス・ラグレーンの補佐官となる。
だらしない噂とは裏腹に、オルヴィスは港町を守るため泥をかぶってきた一途な男だった。
エルヴィナは数字と交渉の才能で、腐敗した港税、滞った倉庫管理、商人組合の対立、密輸問題を一つずつ立て直していく。
彼女を“夫の付属品”としてしか見なかった者たちは、やがて知る。
この女は、誰かに愛されるためだけに生まれたのではない。
街を動かし、人を救い、未来の帳簿に春を書き込む女だったのだと。