あらすじ
二千年前、ユキは人生最大の悲劇を目の当たりにした。
自分を何の疑いもなく受け入れてくれた恩人たち、そして命に代えても守ると誓った少女の死を。
絶望の底に突き落とされながらも、二度と過ちを繰り返さないと固く誓った彼は、その後二千年の歳月を費やした。彼女がいつか転生して戻ってくる「その日」のためだけに、ゼロから強大な国家を築き上げ、王として君臨し続け、牙を研ぎ澄ませてきたのだ。
そして、長きにわたる渇望の時間はついに報われる。
彼女が、国家間の政治条約を締結するための使節団の一員として、ユキの統治する王国に現れたのだ。
しかし、今の彼女は前世の記憶を一切持たない、天涯孤独の学生に過ぎなかった。
両親の元へと導いてくれるかのような奇妙な夢に毎夜苛まれながらも、己の過去を知る由もない。夢の中に現れる謎めいた青年が、目の前にいる国王・ユキ本人であるなど、想像もしていなかった。
ユキは一目で彼女が「あの人」であると見抜いたが、彼女を不必要な混乱に巻き込まないため、そして彼女のささやかな現在を壊さないために、正体を隠し通すことを決意した。
やがて王国の内紛が収まり、条約が無事に締結された時、ユキは大胆な決断を下した。
――彼は、数千年の歳月をかけて自ら築き上げた「王冠」を、あっさりと投げ捨てたのだ。
全く異なる立場、すなわち彼女の「教師」として、彼女の所属する国へと同行するために。
学園の教師という仮面を被り、ユキは彼女の一挙一動を影から見守る。
二千年前の凄惨な歴史を二度と繰り返させないため、立ちはだかるいかなる脅威をも屠る覚悟を胸に秘めて。