あらすじ
クリスマスの雨が降る東京・六本木。
「なあ、風邪ひくぜ。」
見知らぬ男が差し出した一本の透明な傘。
たったそれだけの出来事だった。
二人はもう二度と会わない。
そう思っていた。
けれど、雪深い奥飛騨で、その運命はもう一度動き始める。
恋人を失い、復讐を胸に生きる男。
過去から逃げ続け、帰る場所を見失った女。
互いの秘密を知らないまま寄り添い、
やがて、その秘密こそが二人を引き裂こうとする。
それでも人は、
誰かの何気ない一言に救われることがある。
「風邪ひくぜ。」
その言葉は、雨の夜の挨拶ではなかった。
絶望の中に差し込んだ、小さな希望だった。
これは、復讐の物語ではない。
許しの物語でもない。
帰る場所を失った二人が、
ようやく「帰りたい場所」を見つけるまでの、
静かで、長い冬の物語。