あらすじ
会社という仕組みが存在しない異世界。
商人は一人で荷を仕入れ、職人は一人で注文を受け、働く者たちは家族や師弟だけを頼りに商売を続けていた。
商業都市ラウビーンへ流れ着いたカイルは、かつて上場企業で仕事に奔走していた二十七歳の男。
彼が街で最初に見つけたのは、商機ではない。
処理されない申請書と、書類の山を一人で抱える記録係リーネだった。
カイルが台帳を整理すると、滞っていた仕事が動き始める。
その働きを知った商人や職人たちは、彼のもとへ新たな問題を持ち込むようになる。
共同仕入れ、受注管理、利益の分配、出資者の権利、働く者たちの待遇。
一つの問題を解決するたび、この世界にはなかった仕組みが形を得ていく。
野心のない実務家と、学問を修める機会に恵まれなかった記録係。
互いの足りないものを補い合う二人が、小さな書庫から新しい組織を築いていく、異世界仕事物語。