あらすじ
平成の世で銀行員として融資と資金繰りのプロだった九条玲司は、事故に遭い命を落とした――はずだった。
気がつくとそこは江戸時代中期。自分は見知らぬ長屋で目覚め、体には人間を超える力が宿り、喉の奥には血を求める渇きが絶えず燃えていた。そう、彼はヴァンパイアの始祖として転生していたのだ。
昼間は力が弱まり、夜になると暗視・超人的な聴覚・記憶力が覚醒する。だが「奪って生きる化物」にはなりたくない。玲司は新たに夜坂蔵人と名を改め、盲目を装って幕府公認の「当道座」に入り、座頭貸しとして生きる道を選ぶ。
初期資金わずか二百文から始まる小口融資。前世の経済知識と、相手の状況を見抜く鋭い感覚を活かし、「無理な高利を取らず、返せる道を共に作る」を原則に商いを営む。血を得るときも、必ず銭や米といった正当な対価を支払い、契りを結んで互いに損のない関係を築く。
酒場の片隅で客の困り事に応え、信用を積み上げ、やがて両替商・海運・酒造へと事業を拡大。飢饉や災害、藩の財政難といった危機すら、長期的な視点でチャンスへと変えていく。
時代は流れ、幕末の動乱、明治維新を経ても、不死の身である蔵人は「代々の当主」を装いながら姿を変え続ける。いつしか江戸の夜から始まった小さな金貸しは、日本経済の裏側に根を張る巨大な夜坂財閥へと成長していく――。
これは、始祖ヴァンパイアが「血を糧にするだけの存在」を超え、信用と仕組みで何百年も続く「不夜城」を築き上げる、成り上がりの物語である。