あらすじ
「聖女セラフィナ。貴様の祈りは民を救わぬ偽物だ」
婚約破棄され、異端として断頭台へ。国を裏で支えてきたのに――誰も助けてはくれなかった。あと一歩で、あの女の詐術も、裏で糸を引く影も暴けたはずだったのに。
刃が落ちる、その瞬間。どこか遠くで、荘厳な鐘が鳴った。
目を覚ますと、処刑の三年前に巻き戻っていた。だが記憶は不完全――肝心な証拠が、霧の向こうに霞んでいる。
そんな彼女に残された、ただ一つの手がかり。それは、夢の中でだけ鳴る、あの鐘。鐘が鳴った場面だけが、真実として鮮明に焼きつく。触媒取引の日時、相手の顔、改ざんされた数字――。
「もう祈らない。もう耐えない。今度は――鐘が鳴る前に、全部潰す」
元・危機管理コンサルにして社畜だった前世の知識と、鑑定ギフト。そして“悪夢の議事録”を武器に、彼女は聖女の名を捨て、一介の鑑定士『セラ』として静かに反撃を始める。
やがて出会う、同じ鐘の音を聞いていたという一人の男。交差する二つの魂、少しずつ明かされる真実――。
二度目の人生は、鐘の鳴らない穏やかな夢の中で、ようやく本当の始まりを迎える。
痛快な逆転劇と、静かな救いの物語。短編・完結。