あらすじ
「この世界は、なんて静かなんだ。」
それが、黒川朔弥(くろかわ さくや)が生まれ変わって最初に抱いた感情だった。
しかし、現代は決して静かな世界ではない。
車の走る音。
人々の話し声。
街に溢れる様々な音。
それでも朔弥には、前世の世界のほうが遥かに騒がしく感じられた。
前世の彼は幕末の時代を生きた全盲の少年だった。
目が見えなかった朔弥の記憶に残っているのは、景色ではなく、音と声。
いつも誰かの声、何かの音が聞こえていた。
しかし、その声の主、音の出所を彼は知らない。
あの声は、一体誰だったのか。あの音は?
その答えを求めることもなく生きていた朔弥だったが、恋人・美織の故郷である山奥の村を訪れた時、再び聞くことになる。
「おかえり。」
初めて訪れたはずの村で、自分を迎える声。
それは、前世から続く因縁と、忘れられた秘密へと朔弥を導く声だった。