あらすじ
北海道・函館から、日本大学芸術学部へ進学するため上京した十八歳の春野真希。
中学時代のいじめによるPTSDを抱える彼女は、人前で自分の意見を言うことが苦手だった。
それでも歌うときだけは、誰にも媚びず、飾らず、ただ純粋に声を出すことができた。
上京初日。大宮で降りるはずの新幹線を乗り過ごした真希は、たどり着いた江古田で一人の女性と出会う。
佐藤佐々良、二十三歳。
かつて有名ガールズバンドのボーカル兼ギターとして活動しながら、武蔵野音楽大学に通っていた人物。だが、過密な活動のなかで心を病み、大学を留年し、ステージから姿を消していた。
「一曲だけ、一緒に作らない?」
佐々良の言葉から、すべては始まった。
外出できない匿名トラックメーカー。
服飾専門学校を中退したベーシスト。
看護大学の実習から逃げ出したドラマー。
学校にも、職場にも、音楽業界にも居場所を失った五人は、ガールズバンド《DROPOUT GIRLS》を結成する。
初ライブの観客は、わずか十七人。
演奏は途中で止まり、メンバーはステージ上で動けなくなる。
真希はマイクを握り、客席へ告げる。
「五分だけ、待ってください」
その沈黙を収めた映像が、やがて彼女たちの人生を変えていく。
注目、契約、炎上、過去の暴露。
音楽を届けたいだけだった五人は、いつしか自分たちの痛みを「感動的な再生物語」として売ることを求められる。
成功するために、誰かを切り捨てるのか。
それとも、壊れない速さで音楽を続けるのか。
これは、音楽で病気が治る物語ではない。
治りきらなくても生きられる場所を、五人が自分たちの手で作り始める物語。
短いあらすじ
純粋な歌声を持つ日芸一年生・春野真希と、心を病みステージを去った元人気ボーカル・佐藤佐々良。
社会からこぼれ落ちた五人がガールズバンドを結成するが、注目を集めるほど、彼女たちの痛みは「売れる物語」へ変えられていく。
成功よりも、壊れずに続ける道を選ぶ青春音楽群像劇。