あらすじ
幼稚園の頃、朝倉湊は、泣きそうになっていた小鳥遊澪を助けた。
湊にとっては、困っている幼馴染を放っておけなかっただけだった。けれど澪にとって、それは初恋の始まりだった。
小学校六年生の春、転校を控えた澪は、幼稚園の頃からずっと好きだったと湊に告白する。しかし、彼女を大切な友達だと思っていた湊は、その気持ちに応えることができない。
「これからも友達でいたい」
そう伝えた翌日から、二人は気まずさのあまり話せなくなった。そして一週間後、澪は転校する。湊に別れを告げることができないまま。
それから三年。
澪のいない日々を過ごすうち、湊はようやく、自分が彼女を好きだったことに気づいていく。
中学三年生の春。湊は「この恋に気づいて」という花言葉を持つリナリアの花束を抱え、電車で二十三分先の町へ向かう。
今度こそ、好きだと伝えるために。
けれどそこで湊が見つけたのは、知らない少年の隣で、彼の知らない笑顔を浮かべる澪だった。
これは、互いを好きになりながら、その時間だけが重ならなかった二人の物語。
そして、誰にも渡されなかった花が、水のない花瓶で静かに枯れるまでの物語。