あらすじ
東京都西部、八王子市の外れにある場末のスナック「FOX」は、小さな店だ。
謎めいた美女のママ、木常珠代が切り盛りする店は、常連客の田貫譲治に、謎の老人にして一番の太客、鶴岡らによって支えられている。
田貫はつい先日、同じく常連でFOXでバイトをしている若き嬢、ミマこと中国出身の白美真に入れ込む男、穴熊によって窃盗の濡れ衣を着せられていた。
あまりにも稚拙な濡れ衣で、逆に穴熊が逮捕されることとなる。
時期を同じくして、東京都内では若者や商店主、零細企業の経営者などを中心とした失踪事件が相次いでいる。
警察は、その背景に「歓喜観音会」という、商売繁盛の現世利益を謳った新興宗教の存在を疑うようになっていた。
警視庁の刑事、熊川警部補と相棒の戌井は、とある小さなきっかけから、7年前に発生した失踪事件について新たな手がかりを得ることとなる。
失踪した男の息子が、テレビ番組で父の姿を見た、という情報だった。
一方、スナックFOXに務める中国からの留学生、白美真は、大学の薬学部で薬剤師を目指して勉学に励む学生でもある。
スナックでのバイト代で学費と生活費を賄う苦学生、美真は、なんと大学の薬学部准教授が反社会的勢力に麻薬の原材料を横流ししていた、という大学の大スキャンダルに巻き込まれる。
一件無関係に見えた連続失踪事件と、大学を巻き込んだ薬物の横流しというスキャンダル。それぞれの事件は、博識美女である木常珠代ママと、謎めいたスナックのメンバー達の推理によって、複雑に絡み合った「一本の糸」であることが明かされていく——