あらすじ
2125年。
国家心理環境統制網《ASTERIA》によって、人間だけでなく、建物、土地、機械、海水までもが「未来に生み出す社会損失」で評価される日本。
私立黎明女子高等学校に通う十七歳の朱莉凛音は、歌手、俳優、配信者、モデルとして世界中に知られる人気者だった。
それでも本人は、職業を聞かれるたびに答える。
「職業、女子高生です」
凛音には、物質や土地へ刻まれた過去を現在へ再現する能力《因果再演――REPLAY》がある。
その代償は、自分自身の記憶。
世界を救うほど、凛音は自分が誰だったのかを失っていく。
月二回のギフト・デイ。
世界中のファンから届くプレゼントの中に、差出人不明の黒い石が混ざっていた。
手紙には、凛音自身の筆跡でこう記されていた。
海に触れないで。
月を壊さないで。
私たちは、もう二十八回失敗している。
同じ頃、太平洋深部では、約三十二億六千万年前に海を沸騰させた巨大衝突の記憶《C-3260》が目を覚ます。
地球と月の間には、月を誕生させたジャイアント・インパクトの記憶《T-4500》が、天体として実体化し始めていた。
人類を守るため、災害を破壊しようとする政府。
現在の人類を犠牲にし、新しい月を作ろうとする月城冬華。
凛音を守るため、その自由を奪おうとする九条蓮。
過去の凛音を取り戻したいと願いながら、今の凛音を否定できない御影澪。
そして、未来を予測することができない少女を、保護対象と危険存在の両方として判定する《ASTERIA》。
二十八人の過去の凛音が残した答えを前に、現在の凛音は宣言する。
「未来の私も、過去の私も、国家AIも」
「まだしていないことを理由に、今の私を決めないで」