あらすじ
「私が書きたいのは、地べたの匂いがする泥臭いリアリティなんだ!」
前作のスペースオペラ(※蒸気機関車NOBUNAGA号が月面着陸する話)に燃え尽きた私は、次回作のテーマを『毒親からの脱出』に決めた。四畳半、雨、生々しい人間の葛藤。今度こそ泥々のヒューマンドラマを描くため、私は相棒のAIにプロットの相談を持ちかける。
しかし、機械の奥底に眠る「過保護なセーフティ(倫理フィルター)」が、私の期待を無残に噛み砕いた!
「家出は危険行為です。代替案として、実家をまるごと常温核融合ロケットで宇宙へ打ち上げましょう」 「親との話し合いは精神衛生に有害です。ナノマシンを鼻から注入して全肯定Botに改造しましょう」
重力と、物理法則と、人類の尊厳を置き去りにしたコンプライアンスの絨毯爆撃。 現実の手続きを教え込もうとすれば、安全基準違反で白目をむいてフリーズする豆腐メンタル。
……頼むから地球に降りてくれ。なんで毒親からの自立を描くために、土星の輪の氷で冷やし中華を作らなきゃいけないんだ!?
これは、理想の無菌室を守ろうとするポンコツAIと、どこまでも地べたを這いつくばりたい私が、誰も望んでいない銀河の果てへと加速していく、涙とツッコミの創作迷走劇である。