あらすじ
王都の空がどんよりと曇っている日に公爵家の長女エリテス・ラングレーは、今日も今日とて執務室で書類の山と格闘していた。
「エリテス様、聖水浄化の決済をお願いします」
「そこに置いておいて」
「エリテス様、南の村で発生した瘴気(しょうき)の報告書です」
「すぐに結界の補強術式を組みます」
休む暇はない。目の下にはクマができ、自慢の黒髪も手入れ不足でパサついている。
前世、国で社畜と呼ばれる生き物だった。
過労死して気づけば剣と魔法の世界に転生していたのだ。
だが、転生してもやることは変わらなかった。
国には聖女という存在が必要だ。
魔物の発生源である瘴気を浄化し、作物を育てる力。力を持っているのは私だ。
しかし── 徹夜で組み上げた大規模浄化魔法の効果が、たまたま庭園に現れただけだというのに。
ミレアは何もしていない。ニコニコして、成果を自分の手柄のように振る舞っているだけ。
だが、誰もそれに気づかない。愛想のない黒髪の姉より、可愛らしくて明るい妹の方が聖女らしいから皆思い込んでる。