あらすじ
下級聖女リリアナには、触れた人が心の奥で捧げている「祈りの残響」が聞こえる。
王都の治癒院で、金貨を積んだ侯爵夫人よりも、死にかけている貧しい子供を先に治療したリリアナは、純粋な疑問を口にした。
「どうして金貨を多く積んだ方から、女神様の順番が早くなるのですか?」
その一言で教会の怒りを買った彼女は、『祈るだけの無能聖女』の烙印を押され、雪深い辺境の礼拝堂へ追放されてしまう。
そこで待っていたのは、「祈りは何の証拠にもならない」と言い放つ、冷徹な元王国監査官カイだった。
だが、孤児たちの「寒い」という祈りを聞いたリリアナは、ある矛盾を見つける。
子供たちが薄い毛布一枚で凍えている一方、帳簿には新品の毛布も薪も『支給済み』と記されていたのだ。
リリアナが人々の痛みから不正の入り口を見つけ、カイが帳簿と証拠と王国法によって逃げ道を塞ぐ。
二人が追うのは、孤児院の支援金を奪う司祭、金貨と引き換えに治療の順番を売る司教、そして偽りの奇跡で民を欺く中央教会。
「祈りだけでは誰も裁けず、毛布も届かない。だから、私が出口まで道を作ります」
祈りを聞く追放聖女と、祈りを信じない冷徹監査官。
正反対の二人が、奪われた命と尊厳を取り戻し、腐敗した教会を制度ごと裁いていく物語。