あらすじ
小学5年生の朝倉結衣は、何をするにも失敗を恐れ、先のことばかり考えてしまう慎重な性格だった。雨の日、下校途中に迷いこんだ見知らぬ路地で、結衣は「未来郵便局」という不思議な建物に出会う。そこで出会った寡黙な局長から手渡されたのは、一年後の自分から届いたという一通の手紙だった。
手紙には「今日は、お母さんに"ありがとう"って言って」という、拍子抜けするほど短い指示だけが書かれていた。半信半疑のまま実行してみると、これまで素直な気持ちを言葉にできずにいた結衣の中に、小さな変化が芽生え始める。二通目、三通目と手紙は届き、そのたびに結衣は少しずつ勇気を出し、自分の殻を破っていった。
しかし四通目の手紙には、思いがけない知らせが記されていた。親友のさくらが、一年後に引っ越してしまうというのだ。未来を知ってしまった結衣は、さくらとの毎日を「いつか失われるもの」として見るようになり、かえって今の関係をぎこちなくしてしまう。未来を知ることは、本当に自分のためになっているのか——結衣は、局長のもとで初めて、自分の弱さと向き合うことになる。
局長から「未来を見る人ほど、今日を見失います」と告げられた結衣は、大切なものをどう守りたいのか、自分自身に問い直していく。そして局長との最後の夜、これまでの手紙とは違う、白紙の便せんが渡される。「これから先を書く手紙」——それは、誰かに教えてもらう未来ではなく、自分の言葉で紡いでいく、これからの日々そのものだった。
一年後、六年生になった結衣の手には、あの日々の記憶と、自分の言葉で綴られた一年間の記録が残っていた。