あらすじ
市の児童文学賞で二位になった小学六年生の杏樹は、一位の作品を素直に祝えず、「運がよかっただけ」と口にしてしまう。悔しさを隠すため、誰かの欠点を探してしまう杏樹は、夏休みに港第三倉庫の整理を手伝うことになる。
そこで見つかったのは、壊れた木箱。中には、三十年前に上演されなかったコント「ラーメン店」の台本、ハート形の虫取り網、安物の口ひげ、そして「恋のハンター」と書かれた写真が入っていた。
登場人物は、脚本を書きたい杏樹、皆をまとめる望海、勢いで動く勇汰、空想好きの博己、絵で伝える天翼、木工が得意な匠平、会計を支える光信、動きで笑わせる大樹。そして、三十年前に相方の正治と舞台に立つはずだった元ラーメン店主の瑞枝、資料整理を担う司書の栞里。
杏樹たちは、七月三十一日の港朝市で古いコントを復活させようとする。けれど杏樹は、自分の台本を守ろうとして仲間の案を否定し、天翼の字を笑い、勇汰の失敗を責めてしまう。やがて瑞枝の過去を知った杏樹は、自分の悔しさと向き合い始める。
本番前夜、豪雨で紙の台本が読めなくなる。頼れるのは、天翼の絵札と、仲間たちが積み重ねた稽古の記憶だけ。失敗ばかりの舞台は、やがて港じゅうを笑わせる奇跡の時間へ変わっていく。