あらすじ
現代日本から異世界へ転生し、小国の若き国王となったアルト。
豪華な王宮、美しい側近、忠実な騎士団。
これから始まるのは、魔物を倒し、領土を広げ、歴史に名を残す王道の異世界無双――のはずだった。
しかし、戴冠式の翌朝。
王宮の前には、国民たちが長い列を作っていた。
「隣の家のニワトリが朝早すぎます」
「村の橋が少し傾いています」
「息子が冒険者になりたいと言い出したので、国王様から説得してください」
「うちの畑だけ雨を多めに降らせてください」
この国には、まともに働く役所が存在しない。
そのため、国民からの苦情や相談は、すべて国王のもとへ直接届けられるのだ。
さらにアルトが授かった能力は、
『国民から正式に提出された陳情を、絶対に無視できない』
という、あまりにも国王向きで、あまりにも迷惑なスキルだった。
隣国から宣戦布告が届いても、城下町の迷子の猫を捜しに行く。
古代竜が復活しても、まずは近隣住民から寄せられた騒音問題について話し合う。
王位を狙う弟が陰謀を企てても、なぜか一緒に畑の境界線を決めることになる。
ところが、一見どうでもよさそうな苦情を真剣に解決していくと、その裏から国家を揺るがす事件が次々と発覚して――。
本人はただ苦情処理をしているだけ。
それなのに国民からは、歴史上最高の名君だと勘違いされていく。
これは、世界を救う前に壊れた橋を直し、ドラゴンを倒す前に迷子の猫を捜す、新米国王の異世界お仕事コメディ。